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ファンタジー短編集

第5章 夢の中の少年

「由羅さん、ところで今、何年?」

「二○○九年」

「もうそんなに経ったのか。僕がここの海で死んでから」

 レンはまた俯いた。

「えっ?」

 私は、レンに問い返す。

 何を言ったのか。頭で分かっても心では分からなかったから。

「僕の父さんと母さん、僕を置いて出て行ったんだ。僕は、捨てられたわけ。

近所の人のところに預けられて。

そこに娘さんがいて、おばさんは厳しかったけど、娘さんは僕に優しくしてくれて。

僕は娘さんに惹かれて好きになったんだ」

 レンは、一息つき話を続ける。

「僕は勇気を出して告白したわけ。なのに、冷たく振られた。

同情で優しくしてたと、見下していたと。

信じてた人に裏切られた。それで僕は、ナイフ片手にこの海に来た。そして刺して飛び降りてに飛び降りて死んだ」

 レンの話を聞き心が苦しくなった。

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