『ファンタジー短編集』第6章「ゆめのおはなし」　30ページ

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ファンタジー短編集

第6章ゆめのおはなし

　由羅は、びっくりしてレンに問い返す。何を言ったのかが、頭で分かっても心では分からず、由羅は困惑した顔をする。

「僕の父さんと母さん、僕を置いて出て行ったんだ。僕は、捨てられたわけ。だから、僕は、屋敷の住み込みバイトをしたんだ。そこに女の子がいて、おばさんは厳しかったけど、女の子は僕に優しくしてくれて。僕は女の子を好きになったんだ」

　レンは、一息つき話を続ける。

「僕は勇気を出して告白したんだ。なのに、冷たく振られた。同情で優しくしてたと、見下していたと。信じてた人に裏切られた。それで僕は、２階から飛び降りて死んだ」

　レンの話を聞いた由羅は、涙を零した。

「由羅さんは、それでも死にたいと思うの？」

「え？　どうしてそう思ってるってわかったの？」

「由羅さんの顔に書いてあるよ。悩みがあっても生きていればきっといいことがあるはず。だから、僕みたいに後悔しないで」

「そうだよね。うん！　もう帰るよ。なんかレンの話を聞いて自分の悩みがちっぽけに思えた」

　由羅はレンに笑顔を向ける。

「由羅さん、ありがとう。僕も帰れるみたい。由羅さんをきっと待ってたんだね。由羅さんを救うために」
　
　レンは一気に言うとキラキラと何処かに消えていった。