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ファンタジー短編集

第6章 ゆめのおはなし

 夏のある晴れた日の朝。どこかの公園で由羅はとある少年に出会った。
 
 タンポポの花の色の髪。透き通る青い瞳は、しっかりと由羅の黒目をとらえた。

「どうしたの? お母さんとお父さんは?」

 由羅が少年に聞く。

「居ないよ」

 少年は悲しそうに俯いた。

「どこの子? 名前は?」

 由羅はごく普通の疑問を投げかける。
 
「小さい頃、スイスに住んでて、親の都合で日本に来た。名前は、アトラス・レンジェ。レンって呼ばれてる。お姉さんは?」

「咲野由羅。レンは何歳? 私は十七歳の高三。この場所には逃げてきた」

「十三歳、中二。由羅さんは、何から逃げてるの?」

「毎日毎日、気を遣って、まるで鎖に繋がれているような窮屈な日常に疲れたから。学校、勉強、人間関係、そんな色んなことから解放されたかったの」

 由羅は、レンから目を離し、空を見上げる。

「ところで今、何年?」

「二○○三年」

「もうそんなに経ったのか。僕がここで死んでから」

 レンはまた俯く。

「えっ?」

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