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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第28章 BLUE BIRD

差出人の住所はない

裏面には・・・その名前だけが綴られていた





〃まりあ・・・〃





その3文字だけが…







俺は…ドクドクと心臓が高鳴るような

緊張や、恐れのような気持ちと

ドキドキとかワクワクと言うような

高揚感に似た気持ち



そんな感情の狭間にいるような

落ち着きない気持ちで



ポストの片付けも放り出して

ゴミ袋を引きずり部屋に戻った







マリアからの・・・手紙?







消印は、一昨日・・・





マリアと最後に病院で会った

あの日の

翌日になっていた






あの後・・・マリアが・・・?





マリアは…俺が昨日

空港に行っていたことなんか知らない







もう…会うことはない


会えない・・・






そうわかっていたマリアが

書いた手紙







俺は…恐れだか、好奇心だかに似た

感情のわからない思いで




その封筒を見つめた・・・





ここには・・・マリアの



最後の言葉が



書かれている





マリアの言葉が…ここにある




もう聞こえないマリアの声が



ここに・・・ある






これを開けたら


きっと・・・その声が、聞こえる






そう思って


俺は…控え目で綺麗な封筒を


その手紙の・・・封をあけて





その人柄を思わせるように

丁寧に畳まれた中身を

そっと・・・開いた

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