かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第28章 BLUE BIRD
篠宮 優人 様
もう、会うことも
連絡する手段も、なくなると思ったので
手紙を書きました。
最後まで傲慢で…一方的で
ごめんなさい。
伝えたい事は、きっと
本当は、沢山あったの
だけど…いざあなたを前にすると
忘れてしまうのか、言えないのか
自分の本当の気持ちを
上手く伝えられなかった。
私に出逢った事で
あなたの人生は、大きく変わってしまった。
今さら謝ったって
許される事でもなければ
償える事でもない
一生消えない・・・私の罪です。
私は、あなたの人生から 多くのものを
大切なものを奪ってしまいました。
あなたや、あなたの大切な人達を傷つけ
かけがえのない
二度と戻らない時を奪いました。
ごめんなさい・・・
言わない約束だったけど
本当に・・・ごめんなさい。
それでも…そう思う私の一方で
もう一人
ひどく矛盾した事を思う私がいます。
私は・・・私は、あなたに
ゆうちゃんに出逢えて
本当に良かった。
あなたと出逢った事で
私の、底の見えない…黒く濁った
汚水のような私の人生は
どれだけ底深い器に入れても
すっきりと底まで見える
透明に透き通った、キレイな水のように
渇いて疲れた喉や身体中を潤す
優しい水のような輝きを持ちました。
幸せでした。
あなたと過ごした時間で…その日々で
私は人生で初めて
心の底から、生きている喜びを知りました。
この世に生を受けた、一人の人間として…
そして…女として。
苦しい程、好き・・・って気持ち
愛しく想う気持ち
守りたいって気持ち
どんな時でも希望を抱く心
あきらめない…つよさ
幸せになりたい、と言う想い…そして
相手を・・・幸せにしたいと言う想い
そんな、すべての想いは
私は、あなたと…そして
あなたと過ごした日々から教わりました。
幸せでした。
私は…本当に幸せでした。