
かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第7章 守りたい・・・
マリアを乗せて
自宅まで届ける。
…ちっちぇ体で
いつも一人、買い物行って
重たいもん持ったりしてんのか…。
マリアの…日常生活。
『ここ?』
『あ、うん』
もしかしたら、マリアが
近所とか…人目を気にするかな?
と思い
念のため
建物の少し手前でマリアを降ろした。
デカいマンション・・・
〃妻に、それなりの生活させてます〃
っていう
これも、あの旦那の
ステータスか?
仰々しく、そびえ立つマンション
マリアの・・・〃鳥かご〃
『ありがとう…助かっちゃった』
『おぅ、それじゃあな』
マリアを降ろして別れる
何事も・・・なかったかのように。
『ゆぅちゃん…っ』
『~~?…』
そして、お互いに…
『ううん。…ありがとう』
お互いに〃またね〃は
言わずに。
『本当に…ありがとう…っ』
俺は…本当は気付いてたんだ。
気づいてたけど
見ぬふりをしたんだ。
春らしい服に身を包んだ
マリアの腕や・・・
涼しげな麦わら帽の下に
ちらほらと見えた
傷やアザを
見てみぬふりをして
マリアに何も聞かなかったんだ。
聞いたところで
俺には何も出来ないから・・・。
だけど俺は…
この時のことを
後から死ぬほど後悔することになる。
