かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第8章 ゆるされぬ想い・・・
マリアの細い腕の中・・・
名前のない、ふんわりとした
女の人の匂いがする。
ぽんぽん・・・ナデナデ
マリアの小さい手が
俺を慰めるように
しきりに動いていた。
『・・・~~』
俺は、その匂いとぬくもりの中に…
マリアの胸元にボフっと…
そのままもたれた。
マリアの…心臓の音。
『グス・・・俺、同じになんねぇかなぁ』
マリアの腕の中で
つぶやいた。
『ならないよ・・・』
『・・・』
『なるわけ…ないじゃん』
マリアの腕の力が
少し強くなった。
『ゆぅちゃんは…強い人だから。
優しくて…強い人だから
自分より、弱い者に
暴力をふるような・・・
家族を悲しませるような
心の弱い人には・・・ならない』
『・・・。・・・』
俺はマリアにもたれたまま
腕を伸ばして
マリアを抱き寄せた。
なにやってんだよ・・・
でも・・・涙が止まんなくてさ
中々、顔を
あげるにあげれなかったんだ。
なんか知らねぇけど・・・
メチャクチャ落ち着く空気。
仲間にも誰にも
話したことのない
俺の・・・うちに秘めた
トラウマ・・・なんだろうか。
それが
なんかさ
スーーーっと・・・
呼吸が楽になるみたいに
軽くなってくような感覚がしたんだ。
『マリア・・・』
『・・・って。
ゆぅちゃんのお母さんなら
言うんじゃないのかな』