かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第14章 薄汚いこと・・・
あの男の部屋に押し入った時
大粒の涙をこぼして泣いてたマリア・・・
救出されても尚、震え続けて
一言も話すことも出来なかったマリア・・・
あんな目に遭って
恐怖に怯えて
怖かったに決まってる・・・
あれが正真正銘…
女であるマリアの姿・・・
至極当たり前な
正直な姿なんだ。
俺を心配させたくないとかって言うのか?
おかしくもねぇのに
ニコニコ笑ってんじゃねぇよ。
大人ぶるんじゃ・・・ねぇよ。
強がるんじゃ・・・ねぇよ。
『・・・・・・』
『っ…~~っ、あれ…やだな私』
笑顔のマリアの目から
涙が落ちる。
『・・・笑ってんじゃねぇ』
俺はマリアを抱き寄せた。
『~~っ・・・』
マリアの体が小刻みに震える。
マリアは・・・泣き顔を見せたがらない
俺はマリアを膝に抱えて
背中をなで続けた。
『…ゆぅちゃん?・・・怒らないの?』
『・・・何を?』
『・・・私のこと』
『???』
あのクソ野郎にブチギレちゃいるが……?
『ゆぅちゃん…心配してくれて
あれだけ言ってたのに・・・
言ってるそばから…ホラみたことか、って
言われるかな・・・って』
『・・・バカ』
『怒ってる?・・・』
『・・・怒ってない』
無事で…良かったから
ただそれだけだったから。
無事・・・俺が
そう言っていいモンか…微妙なとこだが。
そして、念のため…
本当に念のためだけど、マリアに聞く
最低?
でもさ…大事なことだろ。
綺麗事じゃ、済まない
『マリア?』
『うん…』
『〃病院〃…行かなくて平気か?』
もちろん総合的な…
〃最悪の事〃も含んだ意味で聞いてる。
『・・・。・・・うん』
少しの間、沈黙して
それを理解したマリアが答えた。
『〃なにもない〃よ…大丈夫。
ごめんね?…心配かけて』
マリアの口から改めて聞くことで
俺はようやくその〃無事〃を確かめる。
良く…はないけど
良かった
少しだけ胸を撫で下ろす。