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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第14章 薄汚いこと・・・

『私・・・出逢った時からさ
ゆぅちゃんに助けてもらってばっかだね』


『?・・・』




マリアが俺の腕の中で
ボフッと顔を沈めて呟いた。




『ありがとぉ・・・ゆぅちゃん』


『・・・』



マリアの声は
やっぱり少し震えてた。





『まだ一言もいってなかった(苦笑)

本当に…ありがとう。・・・

ついでにまた〃避難〃するなんて

…ごめん

ごめんね…ゆぅちゃん』







『〃ごめん〃は、いらねぇ・・・』





『ゆぅちゃん・・・。ゆぅちゃん…』






『無事で…良かった』







マリアの震えが止まるまで
俺は腕の力を緩めなかった。


緩めたく…なかったんだ。










『マリア?ちょっと話しよっか』


すっかり夜も更けた頃
俺はマリアに問いかけた。


マリアも
俺からは聞いてこないだろう
と思ってなのか

事の成り行きをそれとなく
一通り話してくれた。



俺に怒らないのか?
と聞いたマリアを思い返し
ますます思う。


改めて言うが
怒るワケがない。

完全に人を避けて生きることは
できない

極端に交流を拒んだりして
逆恨みされるような事をしてもマズイ

近隣…まして隣人とのトラブルを
避けようと

時にはやむを得ない状況もあれば

今回に至っては
相手があまりに勝手で強引すぎる。

「大変だったな?」じゃ済まない。

本当にとんだ迷惑を被った…
マリアは散々だったハズだ。






そして俺も
大家さんと話したことや
あの男から聞き出した事を
さりげなくマリアに伝えた。


あの男の事に関しては
かえってマリアを怖がらせるだけか?
とも思ったが

今後の事も考えれば知った上で
対策もとる必要がある。


郵便物の件を話したら
さすがにマリアは血の気が引いたような
顔をしたけれど


どこからともなく〃噂〃になっていた
などと言うことは
ヤツのデタラメだと知り


そこに関しては俺と同様
安心してくれていた。




『それでだけどさ、マリア…どうする?』

『・・・』




『あそこ・・・引っ越すか?』





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