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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第16章 瞬間(とき)の・・・悪戯

『…ご迷惑をおかけして
すみませんでした・・・』


「いえいえ
良かったですよタチバナさん。

頑張って
元気な赤ちゃんを産みましょうね」



『はい・・・』




妊婦健診で産婦人科を訪れていた私は
中絶手術の一件を医師に詫びて
診察を受けていた。



先生が快く受け入れてくれて
そして励ましてくれたのは
やっぱり嬉しかった。





「タチバナさん、診察で~す」


『・・・』





だけどこれは・・・やっぱり怖くて
慣れないな…



赤ちゃん産むまで
毎回これがある…んだよね?



ちょっと・・・憂鬱

ほんとは・・・すごく?






「タチバナさん?
診察はちょっぴり苦手かな?」





ニコニコとこう声をかけるのは
この間の診察に立ち会ってくれた
感じの良い看護師さん。





『ぇ・・・・・・と、その私

・・・ごめんなさい』




「うふふ…みんなそうよ♪安心して
それはそうだよねぇ~…ウンウン
緊張もするし恐いし色々よ
女の子は本当に大変だもの」





なんて…気さくに話してくれて
私の緊張をほぐそうとしてくれてる
みたいだった。


そんな心遣いに…


私・・・


前回そんなに醜態を晒したのかな?


なんて…不安というか
恥ずかしくなる

恥ずかしいけど…有難い



良い病院で・・・良かった。



そんな看護師さんの介助を受けて
ちょっぴり(ホントはすっごく)苦手な
診察の準備をする


「少し確認しますね~…ウン
もう少し…深く座りましょう

背もたれにしっかり背中つけて
ここ持って~…ハイ良いですよ

あとはなる~べく楽にして力抜いて
深呼吸すると痛みも感じにくいし
すぐ終わりますからね」


『・・・ハィ』



看護師さんが細かくアドバイスまで
してくれた。


私…ちょっと子どもみたいで
恥ずかしい…




「台が上がりますよ~」


「脚が開きま~す」


「器具入れますね、楽にして下さい」



『~~~~……っ』








やっぱりこわい・・・無理



泣きたい・・・




・・・。




私・・・、私は・・・





診察台の上で目を閉じた私は…


ちょっと・・・ハッとした。

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