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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第16章 瞬間(とき)の・・・悪戯

恥ずかしい…恐い…痛い


心の中で

そんな泣きべそかいてた私は…


なんだかハッとしたんだ。



恥ずかしい…こわい、こわい

痛い、痛いって



私が、そんなこと言ってたら
ダメじゃない・・・って。



気付くと私は…診察を受けながら
お腹に両手を当てていた。



まだ動いたりもしない
何も感じないけど



あ・・・私は・・・

もう〃ひとり〃じゃないんだった。





なんかそう思えて
色々考えちゃったんだ。



もしもこの子が産まれて
時には風邪を引いて
病院に連れて行ったりして


子どもは当然こわくて泣くよね…
先生こわい、注射はこわいって


そこに、私…
一緒になって泣いてたらダメじゃない





こわくなんかないよ…すぐに
よくなるよ・・・頑張ろう?って
言ってあげられるお母さんで
ありたい




お母さん・・・





そうだよね・・・私・・・





私は・・・お母さんになるんだもん







この子に逢いたくて






この子に逢う道を
私が選らんだんだもの…






恥ずかしいじゃないよ
こわいじゃないよ…バカだなぁ私






私が強くならないと
この子守っていけないじゃない






うん・・・そうだよ



それに…〃ここ〃に
一緒にいてくれてるんだもんね……



なんて…。










「ハイおしまいで~す

お疲れさまでした~」





『・・・ぇ』





いつの間にか診察は
終わっていた。





『ふふ・・・ありがと

おかげて、こわくなかったョ』




帰り支度しながら
私は…お腹に両手を当てて
小声で呟いた。




産まれる前から

なんて〃親孝行〃な

優しい子だろう・・・。





励ましてくれた我が子に
お礼を言って

私は病院を後にする。


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