
かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第16章 瞬間(とき)の・・・悪戯
『・・・・・・』
え・・・?
見通しの良いカフェのテラスから
すぐそこの道
やかましいヤジウマ共が
口々になんか言いながら
視線を向ける先・・・
と言うか・・・嫌でも
俺の目にも入る
カフェの…ほぼほぼ目の前の
少しはなれた道
『~~っ!!』
『止まれよっっ!……待てっ!』
怒鳴り声をあげながら
前を走る女を追い回す
スーツ姿の男・・・
ザワザワ…ガヤガヤ
ヤジウマは次第にテラスに集まってる
「ねぇ本当に大丈夫?!アレやばくない?」
「ほっとけよただのバカップルだろ~」
そう・・・一見
ただのカップルの…痴話喧嘩やら
別れ話・・・
『・・・いやっ!』
『っ!!…ほら立て・・・来い!!』
コケて地面に伏した女の腕を
男が引っ張って起こしている
微かにしか聞き取れないが
男のデカイ声だけは聞こえてくる
「ちょ……っと、ねぇ…っ」
「うーわ…なんだありゃ」
「さすがにヤバイって~」
「でも下手につっこんでもさぁ」
ごちゃごちゃと散々騒ぎ立てて
面白がって観ては
あーでもねぇ、こーでもねぇ
なんて好き勝手言ってる野次馬は
所詮は野次馬で
観ているだけで
誰一人助けようともしない
世間って冷てぇよな?
関わりたくない、関わらないのが一番
そりゃそうかもな
お前らには関係ねぇこと・・・
所詮は・・・〃他人事〃なんだからさ
とか言う俺もさ…
このまま
ここでボーっと突っ立ってりゃ
お前らとおんなじ…
ただの野次馬だよな?
傍観者?…確かに俺もそうしたかもな
野次馬の視線の先で
追いかけ回されてるその子が
マリアじゃなければな・・・
