
かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第16章 瞬間(とき)の・・・悪戯
『あ、すんませんでした~』
俺は通りすがりのじぃちゃんに
自転車を返して・・・苦笑い
「ふぁはははは…若いのに
てぇしたもんだねぇお兄ちゃん
えかった、えかった♪
しかし女の子に~あんな…
野蛮な輩がいたもんでぇね
みぃんな見て見ぬふりしてんのぉに
いやはや、捨てたもんじゃないね
しかしお兄ちゃんでぇじょぶかえ?
病院すぐそこだからなぁ?」
人の良いじぃちゃんで助かった(苦笑)
『いやホント…ありがとうございました』
ヨボヨボの……いや
愛嬌ある親切なおじいさんに一礼して
俺は野次馬の視線から逃げるように
立ち去る
マリア・・・どこ行った?!
家とは違う方向に行ったよな…
電話がつながらない
〃「今どこ?なるべく目立たないように
タクシー乗ってすぐに俺ん家行って」〃
メールを打つ俺の手が震えてた…
焦った・・・本当に
死ぬほど焦った・・・
心臓・・・止まるかと思った
そして
さっきのマリアの
ひらがなのメールを見返した…
マリア・・・俺の何倍も
焦ったろうな・・・怖かったろうな
隠れたか
逃げ回りながら震えて
必死にこのメール打ったんだろう
〃「あの人もういない
顔もみられてない、大丈夫
とにかく今日は、この場から離れよう」〃
俺はマリアの不安を一つでも
取れるように言葉を探して
メールを入れてから移動した
〃「ゆうちゃんのお家ついた」〃
マリアと連絡がついて
ようやく胸を撫で下ろす
とんだ・・・
とんだ悪夢だったぜ
あの男との遭遇は
俺とマリアに大きな不安と
懸念材料を残していった
あの男の…不気味な笑み
そして…その意思表示
