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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第16章 瞬間(とき)の・・・悪戯

マリアは涙を拭きながら
お腹の子にそう話しかけて
俺の方に向き直った。


ニコニコと…優しそうに微笑む
マリアの〃お母さん〃な顔・・・





『強ぇー〃かあちゃん〃だったなマリア…』





あの旦那に、怯むことなく

自分が子どもを守っていく…と

強く言い切ったマリアを見て

俺は本当にそう思ってたんだ。





『~~・・・』



『〃お前〃も…みてたもんな♪?』



俺はマリアのお腹に手を当てて
なんとなく…問いかけた。







『ホントは・・・強くなんか、ない

ダメだけど…強くない。

この子…取られないかって…怖い』






・・・取られないか…





実際にあの旦那を目の前にして

何より俺も、その言葉を聞いていて

不安に思うことは無限に広がった。







『大丈夫だよ・・・』





『~~・・・』







『こんな強いかぁちゃんより
お前を守れるヤツはいねぇもんな?♪

こんな強いかぁちゃんから・・・
誰も子どもは奪えねぇよ』







マリアに言いながら
俺は自分にそう言い聞かせた。











『ぁ…でもワリィ…母子手帳
取り戻せなかった・・・』




あの男・・・我が物顔で
持ち去りやがった。




『ぁ…ううん、仕方ないや

保健師さんとかに相談してみるから平気』






『しっかし・・・なんでまた、なぁ?』



『ほんとね・・・驚いた
会社の…お得意様か誰かのお見舞い
っぽかったけど…』






偶然にも…よりによって、というのは
意外にも、本当に身近にある。

1分か…数十秒でも違えば
避けられたのかもしれないのに…なんて


途方もないことを思いながら
俺とマリアは偶然の引き起こした
災難を振り返った…。

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