かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第17章 翼を・・・ください
『・・・そうかよ』
ミユの罵声に
俺は大して言葉を返さなかった
ミユの何かを信じていた?
さぁな・・・
けど…それはやっぱり
『っ・・・なんで…』
『・・・』
『なんで責めないのよ…っ
あたし・・・っ…あんな酷いこと
したんだよっ…?!』
『ミユ・・・お前さ…幸せだった?』
『…っ・・・。??』
『マリアを・・・アイツを…
〃地獄〃に叩き落としたら
お前幸せになれた?』
『・・・~』
『お前・・・アイツに言ったろ?』
・・・〃地獄に堕ちろ〃
興奮して…狂いに狂ったミユが
マリアに言い放った・・・
鬼みてぇな形相で
階段からマリアを突き落とした…
その時の情景・・・音・・・ミユの顔
そして・・・その言葉を
俺は忘れる事が出来ない
『アイツの腹に…子どもが居ようが居まいが
アイツを地獄に叩き落としたら
お前は幸せになれたのか・・・?』
『・・・・・・~』
『・・・・・・そういう事じゃねぇの?』
コイツを・・・
相手を責めても憎んでも
何も生まれない
俺もマリアも・・・幸せにはなれない
だから俺は・・・ミユを恨まない
マリアが・・・そうだったみたいに
マリアの生き方みたいに・・・
『~~っ・・・ぅっ・・・』
涙を浮かべてうつむくミユは
どうにも逃れられない罪の意識に
押し潰されそうなんだろう・・・
口ではいくらマリアに罵声を浴びせてても
悪態ついてても
隠しきれない罪の意識・・・
ミユを信じてた・・・って言うより
それが、俺にはわかったから…なのかもな
だからこそ…か
逆に俺が思うのは
泣こうが喚こうが
時間は戻らないし…やり直しなんかきかない
それが出来るなら
マリアはあんなに悲しまなくて済む
だから俺は・・・
理由はどうあれ、悔やんでいようがいまいが
事を起こしたソイツが
たかが責められたり
仮に罰せられたりしたくらいで
罪滅ぼし出来るなんて
思って欲しくない・・・
お前の奪ったものは
そんな軽いモンじゃねぇんだから