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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第19章 愛してるから・・・さようなら


・・・〃『こわかった』〃




マリアの口からこぼれた本音だろう



当然だ・・・





マリアを偽って呼び出し

常識的なヤツならまず考えらない
常軌を逸した行動に出たのは

他ならぬ自分の夫なんだから






ある種の危険を承知で
ヤツに会いに行ったマリア…



二度と戻りたくないと…
決心して、努力して

ようやく飛び出した
鳥かごの中に



コンクリートの塊に
ひとり閉じ込められたマリアの気持ちが

その恐怖が…あの男に
一片でも

これっぽっちでも
わかるだろうか・・・








『グスっ……ゆぅちゃん、どうして?』




『ん・・・?』






『ゆぅちゃん・・・どこにでも現れる』






『ストーカーみてぇな言い方すんな(笑)』







『・・・いつも・・・どこにいても

現れて・・・私を助けてくれる。

今日も・・・・・・史上最強に

無茶するし・・・』








『ぷっ・・・今日はなぁ~…

記録更新かもな・・・?(笑)』








『無茶しないでって・・・言ってるのに

どうして・・・いつも・・・グスっ』








『ん・・・~だってそりゃ

俺がマリアを〃ひとりにしない〃って

言ってるから?』






もっと言えば・・・そうでないとマリアが




マリアは

マリアこそ・・・いつでも

ひとりで堪えて無茶しちまうからだろ





そして、それは
やっぱり見事に的中するんだけどさ…








『ゆぅちゃん・・・どうして

つよくて優しいのよ・・・

こわくないの?・・・』





『ふふ・・・さぁな』











『優しすぎるよ・・・

同じ・・・人間なのに・・・

同じ・・・〃男の人〃・・・なのに』








『・・・。・・・』






思わずこぼれたマリアの心根みたいな
さりげない一言…



俺は、そこには
なんとなく言及できなかった



確実にわかったのは
マリアが、この上なく
恐怖を味わったってこと…






マリアを・・・無事に連れ出せて
本当に良かった





明日のことなんか
明日考えりゃいい・・・




出口のない不安も
山積みの問題も・・・どうだっていい




マリアが無事なことに
ただ感謝した




だけど・・・

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