
かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第25章 二人の部屋・・・
『明日・・・〃帰ろう〃か、マリア』
『うん・・・』
少し・・・寂しかった
寂しさを隠せない表情をしていた
俺もマリアも・・・
〃『帰ろう』〃
それは・・・別々の場所
離ればなれになる、と言うことだから
夢のような〃ふたり暮らし〃が
本当の夢のような〃旅〃になったような
幻に・・・ついえるような
寂しさ
悲しくは、ねぇんだ
〃一緒になるため〃に
はなれるのだから
そこを乗り越えたら
今度こそ俺とマリアは
一緒になれるのだから・・・
乗り越えたら・・・
この夢のような数日間が
〃日常〃になる
そんな未来が
俺たちにはあるのだから・・・
悲しくはないんだ
寂しいだけだ
『マリア・・・』
『ん・・・』
自然と抱き合って
口づけを交わす
もう少し・・・時間を
『なぁマリア・・・?
明日・・・っつっても
日付が変わる前にムコウ着けば
〃明日〃・・・だよな』
『ふふっ・・・うん、そうだね』
もう少し・・・俺とマリアに
自由で幸せな・・・
夢のような時間を・・・下さい
『明日・・・荷物片付けて
あとは、昼間は
ゆっくり・・・するなり
遊ぶなり、するか』
『うん・・・っ』
まぶしいくらいの笑顔になったマリアを
つよく抱きしめた
出来るのなら
本当は・・・このまま
ずっとはなれなくて
うんと近くにいたくて
誰よりも
一番近くにいたくて・・・
そんな想いをぶつけるかのように
俺とマリアは、なんとも自然に
裸になって体を重ねた
目の前のお互いだけを見つめ
何度も何度も・・・愛し合った
目の前だけみているようで
少し遠い未来を見つめて・・・
夢みたいな空間・・・それを
夢で終わらせないために
そんな…〃希望〃を抱いた
俺たちの選択なんだ
寂しくなんか・・・ねぇんだ
