テキストサイズ

かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第25章 二人の部屋・・・



『はみ出し者なりに・・・意地があるの』




言い終えたマリアが
少し気まずそうに下を向いた





そのマリアの気持ち…その思いは

なんとも自然に

俺の中にスーっと溶け込んできた





なぜ?




それは・・・俺が

共に罪を犯した〃はみ出し者〃だからだろう









『非常識な…私たちに
筋もなにも・・・ないかもしれないけど

それでも私・・・それだけは
ゆぅちゃんの・・・それだけは』







『マリア・・・もう十分』






ありがとな?マリア・・・








『ちゃんと…お仕事も・・・
疎かにしないで、ちゃんと働いて』









『うん・・・マリア、わかった
わかったから・・・』







惜しくなんかなかった・・・ちっとも

仕事も…社会的立場とか言うモノも

なにも



マリアのため…とか

そんな押し付けがましい事でもない




だけど俺・・・




『俺の…最後まで〃葛藤〃したこと

ひとつはソレだった・・・』






『ゆぅちゃん・・・』






『あの人に・・・言われた』






『え・・・』








『前に…マリアの旦那に言われた事…

俺の意見なんか・・・

〃盗人の意見なんか誰も聞かない〃…って』







『・・・』




マリアは複雑な表情で
少し俯いた






『ずけぇ・・・悔しかったんだけどさ
何も…言い返せなかったんだ

あの人の言うこと…それだけは
正しい…って

筋違いな事をしてるヤツが
正論だの…正義感だのって振りかざしても

そんなもんいくら主張しても
誰も…聞く耳なんか…持たねぇって

悔しいけど俺…あん時に
その現実を知ったんだ』






どれだけマリアを…愛していても

堂々と・・・それを

彼女を守ると・・・言えない俺が居たんだ







『だから・・・俺も
〃ちゃんと〃日常を生きる

背を向けずに…働いて、向き合って
困難があっても投げ出さない

そんで・・・今度こそ
マリアと

堂々と一緒になりたい』







祝福してくれなくていい

誰も…認めてくれなくて



だけど・・・せめて



自分たちの気持ちを〃真っ当〃だと

堂々としていられる

俺たちで居たいんだ




人として・・・ちゃんと生きるんだ

ストーリーメニュー

TOPTOPへ