マリア
第20章 奸計曲
昔、こんなことがあった。
その時は確か、俺たちが小学校の低学年ぐらいだったと思う。
智が、
「いいところ連れてってあげる。」
と、言い出して、
やって来たのは、遊園地。
当時、心臓が悪かった礼音に付きっきりの母親に代わって、
父親がよく遊園地に連れてきてくれたのだ、と智は語った。
でも、
当時は、小さな体にまだまだ大きすぎるランドセルを担いだ子供二人だけでは乗せられない、と、係員に追い返されていた。
そう、遊園地の観覧車。
当時から高いところが苦手だった俺は命拾いしたけど、
俺の高所恐怖症を知らない智は心底がっかりしていた。
智「せっかく翔くんにも見せたかったのにな…」
「いいよ?ぼくは?」
その帰り道、
通りがかった公園で見つけた一基だけのブランコ。
そう、智がケガをしたあのブランコだった。
智「翔くん乗って?押してあげる。」
「ぼくはいいよ?それより、智くんが乗りなよ?押してあげるから。」
智「いいの?」
後はもう、知っての通りで、
互いの両親からは「ブランコ禁止令」が言い渡された。