マリア
第6章 練習曲
智「どうだった?礼音の様子は?」
「え?」
…礼音がどんな様子か知らないなんて…
智の言葉に俺が怪訝な顔をすると、智はしまった、という顔をした。
智「実は、礼音の機嫌、損ねちゃって…」
「そう…なんだ?」
何だろう?この違和感。
いつもなら、礼音を怒らせてしまった、と、この世の終わり、ってぐらいのテンションになるはずなのに、
今日はそれが全くない。
それどころか、智には連れがいて、ソイツと今から甘いものを食べに行くとか、って笑いながら教えてくれた。
智「翔くんも一緒にどう?」
「え?」
智「二宮くん、いいよね?」
二宮……って?
和「ども…。」
智が同意を求めた相手は、
いつぞや雅紀が『彼女』だと教えてくれた色白の少年だった。
しかも、智とはかなり打ち解けている様子だ。
智「たまたま病院で会ってそれで…」
ね?と、小首を傾げ、その二宮という少年の顔を覗き込んでいた。
「ごめん。俺、遠慮しとく。」
智「えー!?翔くん、甘いもの好きじゃん?」
行こうよ、と腕を掴まれるも、智を包む微妙な空気の変化に、
俺は戸惑いを隠せなかった。