わたし、お金のためならなんでもします。
第1章 プロローグ
締まりのない半開きの真っ赤な唇から吐き出される紫煙。
すっかり色褪せてしまったピンク色のカーテン。
そのわずかな隙間から射し込んでくる光線が、部屋の中をゆらゆらと漂うたばこの煙を退廃的に照らす。
一箱430円。一本あたり「21円50銭」一見すると大した金額じゃないように感じる。
ところが年間で計算すると(430円×365日=15万6950円)にもなる。しかもなんの得にもならないどころか、とても体に悪いことは幼稚園児だって知っている。
止めれるものなら止めてしまいたい。だけどわたしにはぜったい無理だ。
「だって絶望的に意志が弱いんだもん…」なんて年甲斐もなく小悪魔っぽく唇を尖らせて拗ねてみたけれど。われながらそうとうキモい。
ていうか、止めれないのはたばこだけじゃない。むしろ、たばこなんて氷山の一角にすぎない。
たとえば、床の上にはクローゼットに入りきらなかった服やバッグ。それにアクセサリー類が足の踏み場もないほど散乱している。
しかもこれらの服飾品は、家賃39000円のこの決してキレイとはいえないボロアパートにはあまりにも不釣り合いな高級ブランド品ばかりだ。
世の中には狂ったように買い物をする人がいる。いわゆる買い物依存症っていうやつ。じつはわたしもそのひとりだ。
お金がなければカードで、カードの限度額を超えればローンで。とにかくモノを買って、買って、買いまくる。
昨日だって家賃の何倍もする、ましてや身につける予定のない、まるで叶姉妹が着るようなド派手なパーティードレスを買ってしまった。
ああ、わたしってなんてバカなんだろう……。