テキストサイズ

赤い鴉

第1章 twilight

「ふぅ~」
付きまとって女の相手を終えたクロは煙草を咥える。
「クロ…珍しく機嫌が良いな」
「ようやく猫を手なづけたんでな」
タケルと初めて出会った時、雄を刺激された…バーにいる人のほとんどがタケルに見惚れたことだろう。親切な人を演じて近付いてなぜこんなところに来るか聞いたところ「嫌なことを忘れたい」と返して来た。
実際にタケルがここに来る時は大体弱ってる時で酒に溺れて帰って行く。弱ってる時のタケルの色気は男を暴走させる。今日は手を出すつもりはなかったがあまりにも色気がただ漏れのせいで思わず手を出してしまった。
「なぁ?アヤちゃんのひとりいじめはダメだぜ?みんな狙ってるんだから」
「分かってる…今度みんな楽しもうぜ」
クロがそう云うと男はニヤリッと笑って去って行った。






「タケル…お帰り」
「は?」
学校から帰ると珍しく兄貴の大河(タイガ)がいた。
「何でそんなに驚いている?」
「いや、もう出張に行ったのかと思ってたから」
兄が帰って来るのはいつも深夜だし、出て行くのも早朝と早い。顔を合わせるのも月に何回かしかない。
タケルはため息を吐いて荷物を大河の車に運ぶ、今度の出張は2ヶ月と長いため荷物も多い。荷物を運び終え助手席に座る、忙しいはずなのに車の中は綺麗に掃除されている。
両親は仕事で多忙を極めるためほぼ大河とふたり暮らし。兄であり親代わりのような存在。仕事を初めてから一緒にいる時間は激減したもののこうしていつも気遣ってくれる。
(俺…良い歳してブラコンかよ、キモ)
その兄の気持ちを裏切ってる自分に吐き気がする…でも憧れの兄の力になりたいと願ってたあの頃には戻れない。
「…ケル…タケル?」
「……あん?」
「どうした?ぼーっとして?」
「……あれ?」
辻のマンションに着いたのに降りないタケルを心配そうに見つめる大河。
「俺が持つ、お前疲れてるだろ?」
荷物を運ぼうとすると大河が横から荷物を取って云う。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ