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すきってきもち

第3章 後ずさり





「えっ!?百合さん風邪引いたの?
大丈夫なの?ひとり暮しだったよね?」

「んー、先輩は完璧人間だから
明日には出社して来ると思うよ」


今日は明恵さんが仕事が大変だった
と愚痴りに来店

裕くんが居ないから
代わりに俺を指名してくれた


「なんで風邪引いたの?」
「んー?昨日傘忘れて出歩いてたんだって
まぁ昨日は急に降ってきたもんね」


出歩いてたんだって……どこに?
何しに外にいたの?誰に会うため?

俺の所に来てくれる可能性があった……?


「わんくんは百合さんがお気にいりなの?」
「素敵な人でしょっ」
「同姓でも惚れるね」

百合さんが周囲にどれだけ慕われてるのか
俺の知れない彼女を教えてくれる

明恵さんの話は楽しくて仕方なかった


「裕一郎さん居ないし、そろそろ帰る」

「裕くんに明恵さんが来たこと伝えておくね」
「そうして、わんくん宜しく」


わんくん、ねー
僕という仔犬的キャラクター
『可愛い』が増えると比例して売上げも上がった

本当の自分は
俺なのか僕なのか分からなくなって

だって、俺で接したところで姫様は喜ぶ?
みんなは受け入れてくれる?ないだろ

受け入れないだろ

僕でいることにも慣れて
器用に使い分けてきたつもりが
いつしかやさぐれてく原因になってた

"『無理しなくていい』"
百合さんの言葉に、どれだけ救われたか


「レイくん指名入ったよ」
「了解でーす」

「きゃーっ!わんわんっ」
「久しぶりだわん!いつぶりー?」

俺の内面を見てくれようとした彼女のことは
どう頑張ったとしても忘れられない




風邪、心配だな________



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