
原稿用紙でラブレター
第3章 消費期限は本日中
ベッドに二人並んで腰掛けると、聞こえてしまうんじゃないかというほど胸の鼓動が速くなる。
お風呂で一通り準備はしたものの、これからの相葉くんとのことを思うとどうしても体が固まってしまって。
思いの外準備に時間が掛かって逆上せそうになった頭では、せっかく思い描いてきたシュミレーションも霞んできた。
「…にのちゃん、」
ふいに隣から聞こえた呟きに小さく肩を揺らす。
ちらり目を遣れば、同じくちらりとこちらを見る相葉くんの熱い眼差し。
存分に熱を帯びた瞳が揺れて、また微かに唇が動く。
「……シよっか」
ぽつり小さな声が届き、そのフレーズに一気に体中が熱くなって。
「……うん」
俯いてこくんと頷くと、ゆっくりと距離を詰められる気配がしてきゅっと体が強張る。
そっと肩を抱かれて丁寧に上体が倒され、投げ出された脚を静かに抱えられてベッドに横たわった。
見上げた先には、さっきと変わらない相葉くんの熱い眼差しときゅっと結ばれた唇。
蛍光灯の灯りを遮る翳ったその表情が急に男らしく見えて、心臓がドクドクと早鐘を打つ。
「にのちゃん…いい?」
掠れた声からは緊張が読み取れ、痛いほど伝染してきて。
「うん…お願いします…」
絞り出すようにそう伝えれば、ゴクッと喉仏が動きゆっくりと近付いてきた。
相葉くんっ…
合わさった唇は柔らかくて、控えめにちゅっちゅっと啄ばむように繰り返される。
上に覆い被さった形の相葉くんは、大事なものを抱えるようにして俺の頭を抱いていて。
時折撫でたり耳に指を滑らせたりするのがくすぐったくて、思わずキスの合間に身を捩ると。
「…どうしたの?」
「ん…ううん、大丈夫…」
「……ねぇにのちゃん」
至近距離で火照った顔を見られるのが恥ずかしくて目を逸らせば、少しの間のあと小さく名前を呼ばれた。
「今日のにのちゃん…すっごい可愛い。
もう俺、どうしよ…」
言い終えて切羽詰まったように苦笑いを浮かべながら、また顔を傾けて熱い唇が降りてくる。
っ、相葉くん…
その余裕の無い雄っぽい表情に、体の奥がズクズクと疼いてくるのを自覚した。
