原稿用紙でラブレター
第4章 超完璧溺愛主義
雅紀に無理矢理連れられてきた学校で、無駄にキョロキョロしてる俺。
あの後、どんよりした顔の俺を見かねた雅紀に二宮先生に会いに行くついでに松潤にも会いに行こうと誘われ。
高校に来たのなんて卒業以来で、まだ一年も経っていないのにやけに懐かしく感じる。
慣れた足取りで職員室へ向かう雅紀の後ろについて行くと、前から見知った顔が歩いてきた。
「あ、大ちゃん!」
「なんだお前また…お、櫻井?」
気怠そうに口を開いたものの、後ろの俺に気付くと驚いた顔に変わる。
「よっ、久し振り」
「おわ、櫻井なんか変わったなお前!」
目を丸くして俺を見る元担任。
そういえば会うのは卒業以来か。
「ふふ、翔ちゃんイケメンでしょ?」
「おいすげー茶髪じゃねぇか。あ、耳に穴開いてんぞ」
「ちょ、触んな!」
興味あり気に耳や髪に伸ばしてくる大野の手を払いつつ、こんな他愛もないやり取りがどこか心地良くて。
「で?なんだ?二人揃って」
「ん、ちょっとね。ねぇ松潤どこ?」
「さぁな、職員室か資料庫じゃねぇのか?」
そう言われ、職員室の小窓を覗いた雅紀がこちらに振り返って首を振る。
「資料庫だね。じゃ、いってらっしゃい!」
「はっ?ちょ、お前は?」
「俺はにのちゃんに会いに来たんだもん。
今日は図書室に居るってさっきLINE来た」
緩んだ顔を隠さない雅紀に肩をポンと叩かれて。
「ちゃんと話すんだよ?じゃ、がんばって!」
満面の笑みで再度俺の肩をポンッと叩くと、図書室へと続く階段を勢い良く駆け上がっていった。
完全に雅紀のペースに巻き込まれた挙句、心の準備も何もないまま放置って。
「…なんか知んねぇけどお前も大変だな」
雅紀の後姿を見送ってこちらに振り返った大野に、また肩をポンと叩かれた。
"じゃ、がんばれよ"と、何も知らないくせに背中を押され職員室の前に一人取り残されて。
…もう、なんっなんだよ!
どいつもこいつも勝手すぎんだよっ!
すれ違う生徒から不審な眼差しを向けられているのにふと気付き、握っていた拳を隠しながらしぶしぶ資料庫へと足を踏み出した。