原稿用紙でラブレター
第4章 超完璧溺愛主義
資料庫のドアに差し掛かり、思わず足が止まる。
思えば、松潤に会いにここを訪れるのはあの呼び出しの日以来だ。
俺が松潤に堕ちてしまった、あの日以来。
ここに居ると、まだ中に入ってもいないのにあの時の緊張感や胸の高鳴りが蘇ってくるようで。
ふうっとゆっくり息を吐いてドアに近付く。
…よし、これは殴り込みだ。
この際、今まで言い溜めてきたこと全部ぶつけてやりゃいい。
そんで"俺のこと信じろ"って胸倉掴んで言ってやる。
そう小さく意気込んで、ノックもせずにドアをガラッと開けた。
でもそこには松潤は居なくて。
やけに静まり返った部屋に遠くから部活の声が細く届くだけ。
…あれ?
ここじゃなか…
その時、後ろから激しい衝動と共にいきなり口を覆われて。
「っ!?」
そのまま部屋の中に押し込まれたと思ったら、ガラガラとドアの閉まる音が背後に聞こえる。
訳が分からず口を覆われたまま頭を捩れば、見慣れたその顔が一段と怪しい笑みを浮かべた。
まつじゅ…
「…なにしてんの?」
「んーっ!」
「なんで翔がここに居んの?」
大きな手で覆われて自由にならない顔の横で、わざとらしく耳元で囁く松潤。
つーか鼻覆ってるし!
くるしっ…息できなっ…
ぴったりと耳につけた唇が動く感触と、うまく空気を取り込めないこの状況に一気に頭がフワフワしてきて。
本気で苦しくなってジタバタ動くと、ようやく覆っていた手が外れて瞬時に力が抜けてしまい。
「おっと、」
がくっと膝が折れた体を後ろからグッと松潤に抱えられたけど。
待てよっ…
一体何のつもりだよ!?
腹に回された両腕に完全に頼るしかできない現状にも腹が立つ。
その間も、ぎゅっと後ろから抱き締められ後頭部に擦り寄られている感触が続き。
「翔?大丈夫?」
ふふっと笑いながら低い声で訊いてくるコイツにどんどん怒りが込み上げてきて。
「…んだよ、」
「ん?」
「離せよっ!」
力任せに腕を振りほどき、振り返って松潤をキッと睨みつけた。