原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
まさにぐったりという言葉が当て嵌まるようなにのちゃんの寝姿。
今日は打ち上げするからって張り切って料理作ってくれたから疲れたんだろうし。
いやいいんだけどさ。
つーかむしろ歓迎したいところなんだけどさ。
こうなっちゃうと何しても何言ってもマジでなんも覚えてないんだもん!
小さく口を開けて眠る顔はとても六つ上とは思えない程の幼さ。
おまけに酔って紅潮したほっぺたが蛍光灯に照らされてツヤツヤしてて。
可愛いんだよほんと。
俺だってこんなん見せられて我慢できるかっつったら正直出来ないよ。
けどこんな状態のにのちゃんと致すのは心が痛む。
だって絶対明日はなんも覚えてない。
しかもこないだみたいに体ボロボロにでもしちゃったら…
ごくりと唾を飲み込む。
エサを前にしたライオンの心境ってこんな感じか、なんて。
とりあえずベッドに運ぶ?
けど起きちゃうか。
んでもしかしたらにのちゃんから誘われたりして。
そしたら俺断れる自信ない。
うん、全然ない。
少し考えてから、ふぅと一つ息を吐いて傍にしゃがみ込んだ。
「…にのちゃん」
小さく投げかければぴくりと眉を顰めて。
それから『う~ん…』と言いながら一層眉間に皺を寄せる。
「にのちゃん、ベッド行こっか」
「…ん~…」
「とりあえずベッドで寝よ。ね?にのちゃん」
「ん…?」
うっすらと開けた瞳は潤んだままで。
焦点が合っているのかいないのか、そこに俺がちゃんと映っているのかも分からないくらいにぼんやりと。
けれどそれがすぐ確信に変わったのは、ぎゅっとしがみつかれた息苦しさのせいだった。
「ねる…ねむい…」
「うん、ほらベッド行こ?」
「いく…つれてって…」
「っ…」
舌っ足らずな口調で甘えてくる温もりに流されてしまいそう。
こんなに酔っ払ってるのにしがみつく腕の力はしっかりしていて。
まさに赤ちゃんの抱っこ状態。
落とさないようにしてベッドに降ろすと、離れまいと更にぎゅうっと力の込められる腕。
見下ろす先のその瞳は案の定欲の色を帯びていて。
っ…!
だからダメなんだってば…
「…にのちゃん、今日は寝よ?」
「…せんせぇたちは?」
「あ、さっき帰ったよ」
「……」