原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
少しの間の後うるうるした瞳で見上げてきて言い放った言葉は。
「じゃあえっちする…」
「っ…!」
「しよ…はやく…」
「っ、待って!」
頬を包まれた感触に我に返り慌てて身を引き剥がす。
いやいやちょっと待って!
あっぶね、危うく流されそうだった!
見下ろすにのちゃんは不服そうに唇を尖らせてジッと俺を見つめる。
そんな顔にすぐにでも襲い掛かりたい気持ちをなんとか抑えて。
「でも…にのちゃん酔っ払ってるじゃん。明日全然覚えてないでしょ」
「よってないもん…よってない。おぼえてる」
「酔ってるの。また体痛くしちゃうから今日は、」
「やだ」
酔っ払ってる時のにのちゃんは相当頑固になる。
こんなにストレートに言われるとすぐにでも傾きたくなるんだけど。
「…いいの?明日体痛くなっても」
「いい…いたくないもん」
「ほんとにいいの?俺加減できないかもよ?」
「いいってば…」
こんな誘導みたいなことズルいのは分かってる。
でもこんだけ『いい』って言わせたらもういいよね?
俺だって恋人からこんなに求められてほんとは断りたくなんかないんだから。
「じゃあ…する?」
「ん…する。あいばくんっ…」
「んっ…」
途端に頬を包まれて引き寄せられたかと思ったら蕩けた表情でキスをされて。
「はぁ…すきっ…あいばくんすきぃ…」
「っ…」
潤んだ瞳で真っ直ぐに届けてくれた言葉に、一気に昂ってくる下半身を自覚する。
「俺もっ…好きだよ、にのちゃんっ…」
「あっ…あいばく…」
煌々と灯る蛍光灯の下。
にのちゃんの甘い声は一晩中この部屋にこだました。
…それはいいとして。
翌日。
やっぱりとしか言い様のない反応。
「やっぱ何も覚えてないじゃん!」
「ごめん…だって…」
「だってなに?」
「…間違ってお酒飲んじゃった」
「いやそれ知ってるから!」
ベッドの上でしょんぼりするにのちゃんに思わずツッコんでしまった。
…そんなことを言いつつ。
加減出来なかった俺も俺だけどね。
結局にのちゃんを前にしたら自分を抑えることなんて出来ないんだ。
…やっぱり俺、成長できてないや。
『2018.10.14 ピックアップお礼』end