原稿用紙でラブレター
第1章 原稿用紙でラブレター
初めてにのちゃんとしゃべった時のこと、俺も覚えてます。
3階の廊下でキョロキョロしてたから声かけたら、図書室を探してたんだったよね。
初めてにのちゃんと正面で向き合って、多分きっとその時から俺の中で何かが変わってたんだと思う。
それまでは、なんとなく学校に行って、授業受けて、友達としゃべって、っていう毎日だった。
だけど、にのちゃんに会ってからは学校に行くのがすごく楽しみになったんだ。
授業がある日はめっちゃ嬉しくて。
ずっとにのちゃんのこと見てたの気付いてたかな?
これってひとめぼれってやつだよね。
しつこいくらい話しかけてめんどくさいヤツって思われてたかもしれないけど、俺にとってはそれが学校に来る意味になったんだ。
にのちゃんのおかげで、俺は変われたんだよ。
本当にありがとう。
中央線を跨いだ辺りから綴られたその文章の傍らには、よく見ると所々赤い点がついていて。
何か書こうとしてペン先だけをつけたような跡。
そのまま目線を左に移すと、文の終わりに赤色が集中していた。
もう少ししたら卒業だから、もうにのちゃんに会えなくなるって思うとやっぱりいやだ。
だから、この気持ちを伝えようと思いました。
ぶつけてみようって思いました。
にのちゃん。
俺は、にのちゃんが好きです。
誰よりも大好きです。
俺、ガキだけどにのちゃんのこと守れる自信あるよ。
だってにのちゃんのこと一番知ってるのは俺だもん。
最後に、もう一度言います。
『相葉くん、私もあなたには感謝しています。
私も、いつの日からかこの学校に勤めるのが楽しくなっていました。
それは紛れもなく相葉くんの存在があったからです。
私はずっと、自分を変えたくありませんでした。
怖かったんです。自分じゃなくなりそうで。
だけどあなたに出会ってそんな考えはなくなりました。
自分の気持ちに素直になろうと、あなたが思わせてくれたんです。
だから最後に、私も伝えます。』
三行分ほどの狭いスペースにびっしりと書き綴られた赤い文字。
締めくくられた一文を読み終え、ゆっくりと顔を上げると。
その気配に気付き、にのちゃんも落としていた目線を俺に向けた。