原稿用紙でラブレター
第1章 原稿用紙でラブレター
トクトクと高鳴る鼓動が、なぜか今日は心地良くて。
見つめる先の瞳が柔らかく細まりゆっくりと口を開く。
「…相葉くん」
少し高めの穏やかな声が耳に届き、トクンと鼓動が波打った。
「私も…
相葉くんが、好きです…」
真っ直ぐなその瞳は潤んで煌めいて。
真っ白いほっぺたと可愛い耳は、あの日と同じようにピンクに染まっている。
ずっと待ち望んでいたその言葉を聞いた途端、無意識に涙が溢れ出してきた。
「…っく、」
「相葉くん…?」
そんな俺に驚いたにのちゃんが近付いてきて顔を覗き込む。
やっと…
やっと俺、にのちゃんと…
込み上げてくる色んな感情が抑えられず勢い任せに抱き寄せた。
ふいの衝撃に驚きの声をあげ、しばらくして背中にちょんと静かに手が添えられると、ポンポンと優しく撫でてくれた。
あぁ、なんて…
なんて幸せなんだろう。
想いが通じ合うってこんなに幸せなんだ。
込み上げてくる熱い想いに、俺の体がにのちゃんで満たされていくようで。
もっとそれを感じたくてそっと体を離した。
メガネの奥の鳶色の瞳は揺れ潤んで、しっかりと俺を映している。
ほのかに染まるほっぺたを両手で包むと、その感触に懐かしさが蘇ると同時にトクトクと胸が高鳴った。
何か言いたげに微かに動こうとする薄い唇を目線の先に捉えて。
にのちゃん…
「好きだよ…」
呟きとともに、ゆっくり重なった唇。
ずっと触れたくて触れたくて。
沿うように吸い付く柔らかいその感触に体の芯が震えた。
抑えられなくなる前にそっと唇を離すと、睫毛を揺らしながらゆっくり目を開けて。
「どきどき、しました…」
至近距離で見上げながらそんなことを言うから、危うく衝動に駆られそうになり。
もう、反則だって…
小さく溜息を吐いた俺をきょとんと見つめる愛しい人に、思わずふふっと笑みを溢した。
これからは、いつだって傍に居るから。
にのちゃんを笑顔にするために。
だから、とびきりの笑顔は俺だけに見せてね。
その代わり、俺しか知らないにのちゃんをもっと教えてあげるから。
今日からは…
先生じゃなくて恋人だね、にのちゃん。
『原稿用紙でラブレター』end