原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
「…今日はここまでです」
講義が終わると、すぐにノートと教科書をリュックにしまって席を立つ。
「あ、相葉!今日ヒマ?みんなで、」
「あ、ごめん今からバイトなんだ!
また今度ね!」
友達の誘いを『ごめん』のポーズでかわして、足早に大きな教室を後にした。
この春、俺は大学の教育学部に進学した。
まさか自分が教師を目指すなんて、高校に入った時には夢にも思わなかったけど。
進学についてなかなかエンジンがかからなかったこともあり、それならば当然実家の自営業を継ぐものと、親はもちろん大ちゃんだってそう思ってたはず。
だけど…
運命の人に、出会ったから。
俺を変えてくれた、運命の人に。
近付きたくて、触れたくて。
その憧れにも似た想いが膨らんでいって、どうしても同じ景色を見てみたくなったんだ。
…にのちゃんと、同じ道を歩んでみたくなった。
それを打ち明けた時はラブレターを渡した時より緊張したけど、にのちゃんはまた俺の想いをちゃんと受け止めてくれて。
それからはにのちゃんを始め、大ちゃんも松潤もみんな俺のことを全力でサポートしてくれた。
こんなに必死になったことないってくらい、ただがむしゃらに勉強だけをする日々。
これだけ一つのことに熱中できたのも、全てはにのちゃんが居たから。
告白の返事がどうであれ、大袈裟なんかじゃなく俺の人生を変えてくれた人に少しでも近付きたい。
その一心で、最後までやり抜くことができたんだ。
そんな、目標でもあり、ずっと想い続けて恋い焦がれてきたその人。
今は…
俺の一番大切で、誰よりも大好きな恋人。
リュックを揺らしながら駐輪場まで走り、サドルに跨ったと同時にポケットのスマホが震えた。
見ると、今しがた想いを馳せていた人からのメッセージが。
『相葉くん、お疲れさま。
今日もバイトがんばって。
帰りに寄ります。』
短くそう書かれたメッセージに自然と頬が緩む。
思わず画面を見つめてふふっと溢し、すぐに返信して急いでバイト先へと自転車を走らせた。