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原稿用紙でラブレター

第2章 年上彼氏の攻略法






すっかり板に付いたレジ打ちを流れるようにこなしながら、頭の中で考えを巡らせる。



さっきの"有岡"ってヤツ。
アイツ絶対にのちゃんのこと狙ってるよな。


しかも"俺たちの"って言ってたってことは…
他にもあんなヤツらがいるってこと?


大ちゃんは『ガキの戯言だから気にすんな』って言ったけど、あんな宣戦布告されたら気にならない訳がない。


…もしかして、にのちゃんの様子がおかしいのはこれのせい?


あんなヤツらに付き纏われてること俺に知られたらとか、また余計な心配してるんじゃないの…?



「ありがとうございましたー」


ぐるぐると派生する考えに追われつつ、マニュアル通りにお釣りとレシートを渡してふうっと息をつく。


…にのちゃんの傍にいつもあんなヤツがいるなんて。


そう思ったら途端に胸がざわつきだして。


同時に、そんなことを誰にも言えずに一人で抱え込んでるにのちゃんを思うと…



ぎゅっと胸が締め付けられそうになった時、カウンターにコトッと置かれたコーヒーに慌てて我に返った。


「いらっしゃ…」

「よぉ」


言葉を遮られて顔を上げると、ふふっと笑うイケメンが居て。


「っ、翔ちゃん!」

「よぉ、久し振り」


翔ちゃんとは電話やメールのやり取りはしていたものの、卒業以来全く顔を合わせていなかった。


目の前でちょっと照れ臭そうに笑う翔ちゃんは、髪を少し染めて眉毛を凛々しく整えてて、なんだか随分垢抜けたような感じがする。


開いたシャツに見え隠れするネックレスも大人の雰囲気を漂わせていて。


「うわ~どうしたの、急に」

「うん、いやちょっとこっちに用があってさ。
元気そうだな相変わらず」

「そっちこそ。てかなんか雰囲気変わった?
なに、松潤効果?」

「は、ちげーし!」


松潤のことになるとすぐムキになるのは前と変わってないな。


思わずふふっと笑うと、その先で赤い顔のまま何やらごそごそとポケットを漁りだす。


「ん、これ」


言いながらずいっと差し出したのは、ヨレた二枚の長方形の紙。


反射的に受け取ると、そこに書かれてある文字に目を留めた。

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