原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
遊園地…?
「妹がバイト先でたくさん貰ったらしんだけどさぁ、あと二枚がどうしても捌けなくて」
目を上げると、窺うような視線を向ける翔ちゃんと目が合って。
「でさぁ…今度の日曜、一緒に行かね?」
ポリとこめかみを掻きながら伝えられた言葉に、浮かんだ疑問を素直に口にする。
「え…俺と翔ちゃんで?」
「ふはっ、ちげーよ!
"俺ら"と"お前ら"とだって」
『なんでお前と遊園地行くんだよ』と苦笑する翔ちゃんにつられてヘラッと笑いつつ、もう一度手元の紙に目線を落とした。
…そうだよね。
てことはつまり…
これって、もしかして…
"Wデート"ってやつ…!?
その新鮮な響きに、自分で呟いたにも関わらず急に恥ずかしくなって。
「予定大丈夫そうか?二宮先生にも聞いといてな。
詳細はまた連絡するからさ」
『いくら?』って言われて慌ててレジを弾き、お釣りを渡しながら小さく口を開いた。
「あの…ありがと、翔ちゃん」
多分、相当緩んだ顔をしてたんだろう。
俺を見ると手の甲で堪えるように口元を抑え、コーヒー缶を握って『じゃあな』と振りながら翔ちゃんは店を出て行った。
その後ろ姿を見送って、再び視線を手元に戻す。
少し皺の寄った紙を両手で引き伸ばしながら、高鳴る胸をそのままにジッとそれを眺めて。
にのちゃんと…
デートだなんて…
うわ…
超楽しみっ…!
緩みきった顔のままレジ対応しているのを隣の店長から訝しげに見られても気にしない。
さっきまでにのちゃんのことでぐるぐる悩んでいた気持ちも、嘘のように晴れていて。
早くこのことをにのちゃんに伝えたくて、時計を気にしながら業務に精を出した。