原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
目的の遊園地のシンボルとも言える観覧車が見えて、心なしかワクワクした気分になる。
さっきまでは電車の中でも隣に座る相葉くんに過剰に反応していて。
揺れの度に少し触れる腿や肩に、体の左半分がじんわり熱をもったまま下車するはめになった。
そんなおかしな気分も、キラキラした雰囲気で溢れる場所を前にしてどうにか落ち着いてきたようで。
遊園地なんて小さい頃に数回行ったっきり。
日曜日とあって家族連れも多く、その懐かしい光景が蘇って自然と笑みが溢れた。
「チケットあるし、先入ってよっか?」
入場ゲートの前まで来て、二枚の紙を差し出しながらこちらを向いて相葉くんが口を開く。
あとについてゲートを潜れば広がる風景に心が躍った。
立派なアトラクションが沢山あるわけじゃないけど、そこかしこに響く楽しそうな歓声や幸せそうな面々に何もしてないのに楽しくなってきて。
「あ、ねぇあそこに座って待ってよっか」
「うん」
緩んだ頬のまま頷くと、なぜか相葉くんが言葉に詰まったように動かない。
そして急に顔が赤くなったと思ったら、グイッと俺の腕を引っ張ってベンチへ歩き出して。
何が起こったのか分からず、されるがままベンチまで連れられて腕を離されたからそっと腰を下ろした。
だけど、立ったまま動こうとしない相葉くん。
「…にのちゃん」
ぽつり聞こえた声に隣を見上げると。
「そんな可愛い顔…外でしちゃだめだから」
ぐっと拳を握って唇を噛み締めながら俺を見下ろすその瞳は、赤い顔のせいか潤んで煌めいていて。
か、かわいい顔…?
「…そんな顔してたら誰かに取られちゃいそうだもん」
続いて小さくそう呟き、すとんと隣に腰掛けた。
あれ、拗ねてる…?
少し口を尖らせた横顔を窺い見て、そんな相葉くんが何とも言えず可愛らしく思えて。
「…うん、ごめん」
含み笑いつつそう返せば、チラッとこちらを見た相葉くんが"ほら、そういう顔!"と指を差してきた。
その必死な姿がおかしくて、思わず両手で口を覆って笑いを堪える。
「あ!もー…ほんと俺心配なんだからね!?」
「ふふっ、ごめ…」
「雅紀!」
小さく肩を揺らしながら堪えていると、前方から聞き覚えのある声が聞こえた。