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原稿用紙でラブレター

第2章 年上彼氏の攻略法






待ち合わせの最寄り駅。


木陰の下、手持ち無沙汰にぼんやりと佇む。


時間まで三十分以上もあるのに、どう考えたって早く着き過ぎた。


十分な程時間はあったから色々悩めば良かったんだろうけど。


結局おしゃれには程遠いと思いながらも、外出の時にいつも着ていく格好に落ち着いて。


ネルシャツにジーンズ、スニーカー。


カバンには悩んだけどさすがに仕事用のじゃあんまりだと思って、前に買った肩掛けの小さなショルダーバッグにした。


もう一度身なりを足元から確認しつつ、直してきた寝ぐせがぶり返してないか頭を撫でてみる。


家に居ても落ち着かなくて早く出てきたけど、ここに居たらもっとそわそわしてきて。


日曜日でそれほど人通りも少ない駅。


全く進んだ気がしない時間をスマホで確認して、少し高くなってきた太陽から射す木漏れ陽を見上げた。


「にのちゃん!」


突然聞こえた声に驚いて振り向くと。


満面の笑みを湛えて小走りで駆け寄ってくる相葉くんが。


いつも通りのカジュアルなジーンズ姿に、スタイルの良さが際立って思わず心臓がきゅっと締め付けられる。


爽やかな笑顔で近付いてくるその姿にどんどん心臓が高鳴っていって。


そのまま目を離せないでいると、はぁっと息をついて木陰に入ってきた相葉くんが気遣うように声を掛けてきた。


「にのちゃんおはよ。ごめんね、待った?」

「おはよ。ううん、俺も今さっき来たとこ…」


ちらっと目を上げてそう言うと、柔らかく笑う相葉くんと目が合って。


急に近くなったこの距離に否応無しに顔に熱が集まる。



…だめだ。


まだ待ち合わせの段階なのに。


相葉くんを意識し過ぎてるのは十分自覚してる。


だって…初めての"デート"らしい"デート"なんだから。


それに、相葉くんに会うとどうしてもあのことが過ぎって…



「…にのちゃん?どうかした?」

「っ!ううん、ごめ…」

「そう?俺ね、今日超楽しみにしてたんだ」

「ぁ、うん…俺も」

「それにさ…私服のにのちゃんがこんな可愛いって知らなかったもん」

「…え?」


小声でそう言った相葉くんの顔も赤く染まっていて。


へへっと照れ臭そうに笑うその顔に、一気に体温が上昇した。



もう…
こんなんじゃ今日一日もたないよっ…!

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