原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
涙腺を引き締めるようにグッと眉根を寄せれば、砂利を払い終わった手をそっと引いたにのちゃんと目が合う。
ぼんやり灯るベンチの下で、正座をした大人の男二人。
誰も居ないとはいえ、端から見たら何やってんだって思われるに違いない。
それににのちゃんのスーツが汚れてしまう。
そう思って一緒に立ち上がろうとすると、肩に置かれていた手にぎゅっと力が篭って。
目を伏せたまま肩からするりと手が移動して、俺の腕を弱々しく掴んだ。
「俺のほうだから…」
「…え?」
ぽつり呟いた声が小さくて訊き返すと。
「謝るのは…俺のほうだよ…」
確実に聞こえたその言葉に疑問しか浮かばない。
…謝るって何を?
「にのちゃ…」
「ごめんねっ…ほんとに俺、逃げてばっかり…」
唇を噛み締めたその表情が途端に歪みだして。
今にも零れそうな涙の膜を湛えた瞳で見つめられ、観覧車で見た眼差しと重なってこんな時なのにドクンと胸を打たれる。
「…相葉くんと同じ気持ちだったのが嬉しくて…
嬉しかったんだけど…あの時、怖くて…」
「っ、それはほんとに俺が悪いんだから!
ほんとにごめん…」
「ううん…俺の方こそ、その…
蹴っちゃったりして…ごめんね、」
『痛かった?』って心配そうに俺を覗き込む。
あれは、ああでもしてくれないと本当に取り返しのつかないことになっていたかもしれないから。
『大丈夫』って少し微笑むと、不安を前面に出していたその表情がふっと緩まった気がした。
「…ほんとに嬉しかったの、俺。
だけど相葉くんに…その、触れられてね、もう…
我慢、できなくなりそうで…」
ぽつりぽつりと言いながら段々頬が赤く染まっていって。
「相葉くんに会ったら…どうかなっちゃいそうで…
全部から逃げてて…ごめんなさいっ…」
そう言い終えると、頬を染めたまま苦しそうにはぁっと息を吐く。
「今だってね…思い出して…
もう、どきどきして…」
そして、そっと触れていた俺の腕をぎゅっと掴んだ。
思いがけないにのちゃんの言葉と今のこの状況に、また体の奥が熱くなりかけるのをグッと堪える。
…待って。
それってさ…
俺のこと、許してくれるの…?
にのちゃんにまた…
触れてもいいってこと…?