原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
ここで会う時にいつも座るベンチに腰掛ける。
心なしかにのちゃんとの距離がいつもより空いているのは、気のせいなんかじゃないと思う。
お互いの間に流れる沈黙が、心臓の音をやけに鼓膜に響かせて。
黙ってたって始まらない。
俺が…俺から、ちゃんと言わなきゃ。
「…にのちゃん、」
小さく口を開くと、隣で黙り込んでいた肩が微かに動いて。
「あの、この前はほんとに…ごめんなさい。
俺…ひどいことしちゃって…」
ぽつぽつと話し出した俺の言葉を隣で静かに聞いてくれているのを感じた。
「にのちゃん嫌がってんのに…
抑えらんなくて、俺…
ほんと、どうしようもないガキだよね…」
自分勝手な欲望のまま中途半端な知識しかないくせに。
ましてやあんなとこでなんて、どう考えたっておかしいに決まってる。
「もう…言い訳なんてしないから。
ただひとつだけ…ひとつだけ聞いてほしいんだ」
そう言ってすぅっと息を吸って、ザっと砂を鳴らしながらにのちゃんの前に正座する。
「俺っ…もう二度とあんなことしないからっ!
だから…もう会わないとか言わないでください…!
ごめんなさいっ!」
驚くにのちゃんの瞳をしっかり見つめながら、言い終えて勢い良く頭を下げた。
ぎゅっと目を瞑って、おでこに纏わる砂利の感触に唇を噛み締める。
こんなことで許して貰えるなんて思ってないけど。
今の俺に出来る精一杯の謝罪と、伝えたい気持ちをとにかくぶつけた。
にのちゃんごめんなさい…
お願いだから…
俺のこと嫌いにならないでっ…!
「相葉くんやめてっ…!」
降ってきたのは明らかに焦ったにのちゃんの声。
顔を上げようとしたら、すぐ傍に座りこんだらしいにのちゃんの手が俺の肩に置かれて覗き込まれた。
突然の至近距離に思わず心臓が跳ねる。
目の前のにのちゃんは、眉を下げて瞳を揺らしながら俺を見つめていて。
そっと手が伸びてきて反射的に目を瞑ると、おでこについた砂利をゆっくりと指先で払ってくれた。
あんな酷いことをした俺にこんな風に接してくれる優しさに心底泣きたくなる。