原稿用紙でラブレター
第3章 消費期限は本日中
この時季になると、いつも見慣れた店内がちょっと華やかになる。
星やベルのキラキラした装飾が壁に貼り巡らされ、天井にまで至っていて。
レジにも心ばかりのミニツリーがちょこんと居座り、その存在だけでこれから訪れるイベントを充分に演出していた。
12月に入り、街はすっかりクリスマスムード。
バイト先のこのコンビニも勿論、率先してそのイベントに乗っかる勢いで。
ケーキやチキンの予約対応に追われる中、ふと昨日のにのちゃんとのやり取りが思い出される。
他愛ないメッセージの最中、ふいににのちゃんがこう切り出した。
『もう12月だもんね。
あ、もうすぐ相葉くんの誕生日だね。
24日はバイトなの?』
『にのちゃん覚えててくれたの!?
ちょー嬉しい!
24日はね、バイトだけど夕方には上がれるよ』
『もちろん。
クリスマスは相葉くんの誕生日って覚えてるから。
バイトなんだね。誕生日どうしよっか?』
『お祝いしてくれるの?
嬉しいよー!
どうしよっか?にのちゃんちは?だめ?』
『家でいいの?外でご飯とかじゃなくていい?』
『いいよー。だって外はどうせクリスマスじゃん』
『それもそうだね。じゃあうちでお祝いしよっか。
あとね、プレゼントは…リクエストありますか?』
『えープレゼントとかいいのにー!
じゃあねぇ…にのちゃんがいい!
なぁんてねー♡』
…って送ってから、既読にだけなってやり取りは途絶えたんだ。
俺またやらかしたかなー…。
冗談のつもりだったのに怒らせちゃったかなぁ…。
レジ対応を卒なくこなしつつ、頭の中はにのちゃんのことばかり。
冗談って言ったけど半分は本気。
だって…
俺達付き合ってもうすぐ1年になろうとしてるのに、まだキス止まりなんだもん。
前に遊園地で俺がやらかしてからはにのちゃんとそういう雰囲気になかなかならなくて。
なんとなく警戒されてるような気もしてるし…。
だけど…
正直もうキスだけじゃ足んないんだ。
俺だって一端の健全な男子なんだから。
好きな人とそうなりたいって…
いつも思ってるんだよ。
…にのちゃんはどうか分かんないけどさ。
放っといたら次々に浮かんでくるもやもやを打ち消すように、混み始めたレジの対応に精を出した。