原稿用紙でラブレター
第3章 消費期限は本日中
学年会議を終え職員室へ続く廊下をとぼとぼと歩く。
胸元に抱えた会議資料を顔に近付けて、隠すように今日何度目かの溜息を溢した。
…ついにこの時がきたんだ。
今までどうにかやり過ごしてきたけど、いつまでもそれでいい訳がない。
昨日の相葉くんとのメッセージのことが頭から離れなくて、正直授業中も会議中もそれどころじゃなかった。
俺だって…
相葉くんとそうなりたいって思ってる。
キスは…たまにするけど、まだどきどきするけど…
もっとして欲しいって思うこともあるし…。
でも、いざ相葉くんとのことを考えると…
ううん、考えただけで…もうどうにかなっちゃいそうで。
先に進みたくても、なんか怖くて…
俺のほうが年上だからそういうこともちゃんと考えなきゃいけないのに。
多分あのメッセージは冗談と本気が入り混じってる。
無理強いなんて絶対しない優しい相葉くんだからあんな風におどけてみせたに違いない。
ここはもう…
覚悟、決めなきゃ。
だって誕生日だもん。
一緒に過ごす初めての誕生日だから。
初めての…
「わっ!」
「うわっ!」
急に背後から両肩を叩かれ、抱えていた資料をバサバサっと落としてしまった。
「あ~もう松本先生やり過ぎだって」
「ふふっ、いやそんなに驚きます?」
後ろを振り向けばニヤニヤしながら資料を拾おうとしている松本先生と、苦笑しつつこちらへ歩いてくる大野先生が。
「なんですかっ…」
「あ~ごめんなさい。いや、あからさまに落ち込んでるから元気出して貰おうと思って」
はい、と拾い上げた資料を手渡されニヤっとその口角が上がる。
「なに、また悩んでんの?相葉絡みか?」
続いて大野先生にもニヤニヤした笑みで覗き込まれ。
「別に悩んでもないし落ち込んでませんっ」
早口で言い捨てて、赤くなりそうな顔を隠すようにそそくさと歩き出す。
「悩みあるなら聞きますよぉ~」
すると、背後から松本先生の楽しそうな声がして。
聞くって…
こんなこと言えるわけな…
…あ!
くるっと振り返り松本先生の元へ足早に戻る。
「あのっ…そ、相談があるんですけど…」
窺うように見上げると、"え?"と顔を前に出して驚いた顔の松本先生と目が合った。