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ねぇもう嫌・・・

第13章 治療




『君のこと心配してたんだ。どこかでコンタクトを取ろうと思ってた。早く気づいてあげられなくてごめんね。』


時折見せてくれる柊先生の優しい一面に、涙が溢れた。


しゃくりをあげて泣いた。


私も言葉で返答したかったけれど、辛くて、何か言いたい気持ちは山々なのに、何も言えやしなかった。


これまでの出来事とこの言葉のギャップが酷く大きくて、その間に身を置かれている私は辛くて仕方がない。


先生も頑張っているんだ。先生のために頑張ろう。


前を向こう。頑張って生きていたら、きっと良いことがある。


そんな青空のような、久々に訪れた穏やかで温かい時間に、涙が止まらなかった。



ようやく落ち着いた、それでも何かの拍子にどっと泣いてしまいそうな、未だ不安が消えぬ時。


柊先生は、澱んだ空気を追い出すように声色を変えて話し始めた。


『君の痛みがどこから来ているのかはっきりさせたい。明日、検査しよう。』


やはり涙が溢れた。


心臓が痛くて、痛くて苦しい。


『診断を下すには多角的に診る必要があるんだ。検査も幾つか受けなくちゃならない。』


そこまで話すと、柊先生は一旦止めて私を見た。


そして下を向き、


"ここまで患者に心を左右されたのは君が初めてだよ"


と、ポツリと言った。

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