
ねぇもう嫌・・・
第20章 入院
「ひなちゃんはさ、あんまり喋ってくれないけど、その代わりよく泣いてくれるから、それで判断してるってとこもあるんだよね。」
私は診察台に腰掛けたまま、佐藤先生はデスクのパソコンを見ながら話し続けた。
「診察も治療も嫌だよね。
大丈夫、それはみんな分かってるから。
でも…嘘は付いちゃ駄目。
此処は病院だし、治すために来てるんだから、包み隠さず話してほしいの、わかるよね?」
「…」
「ひなちゃんが、嫌だって言ったり泣いたりしたら、先生達は "ひなちゃんはこれが嫌なんだな" って分かる。
でも、嘘ついたらひなちゃんにしか本当のことはわかんないんだよ。」
「患者に寄り添えない医者が、必ずどこかに居るでも、
でも…お願いだから受け止めて。
受け入れて。
"痛くない"って嘘つかないで、
冷たい医者でも、ちゃんと素直に、話してほしいの。」
「きっとこれから、そういう無愛想な人に当たる時があると思うんだ。」
佐藤先生の最後の一言に、永遠を感じた。
一時終了した通院が、また再開しちゃうって不意に察してしまった。
…嫌だよ。
嫌だよっ…
そんなの、もう耐えられないから…。
苦しい…っ
思わずピンクのバスタオルを指先で掴んだ。
佐藤先生がそれに気づいたのか、慌てて話をまとめた。
「っごめん。分かってくれたならいいんだ。
今は嘘つかないってことだけ約束して?
難しいことはもっと大きくなってから話そう。」
