
ねぇもう嫌・・・
第3章 病気発覚
そうして決定された闘病生活。
これはその初日のことであった。
橙色の細長い看板がそびえ立つ小さなクリニック。
予め渡された書類を受付に渡して順番を待つ。
総合病院とは違って見渡せる程度の広さではあるものの、その閉鎖的空間がむしろ不安を煽った。
待合席には私を含めて3人。
内1人は会計の方に向かったので、単純計算で見積もった診察の順番は的中した。
あっても薬が処方されるくらいだろうか、と安易な言い聞かせをしているととうとう順番が来た。
「笹川さん、笹川陽菜さん。診察室にお入りください。」
処置室を通り過ぎ、奥の診察室に足を踏み入れる。
「こんにちは」
扉の方に振り向き、にこやかに挨拶したのは男性医師だった。
紺色のスクラブよりも、白衣が目立つ。
「片桐です。」
そう言いながら私に傾けられた名札には、『片桐陽向(カタギリ ヒュウガ)』とあった。
「お願いします…。」
目が合ったのを慌てて避けるようにして頭を下げた。
見た目30代と若く、細身の長身。
出会い方が違えばきっと魅力的に映るのに、今の私には怯える対象そのものに他ならなかった。
私の小さい挨拶を、先生は優しく受け取ってくれた。
「笹川…陽菜さん?」
確認を乞うように呼名されて、はっきりと頷く。
「はい」
私が応えると先生は再びカルテに目を移した。
