卑怯なボクは深海魚
第8章 闇が二人を近づける
「…なぁ、俺の手が震えるのを止めるには…危ない事をした時だってのは言ったよな――――…」
辻山が俺の手を振り払わないのは…
そんな事を言いながらも…期待しているからなのだろうか…
それとも……
振り払う価値が俺にはもう…無いってことか?
「――――…先輩?」
それでも――――…俺はこの手を離したくなかった…
「なぁ…今度は――――…俺がお前を脅そうか?
その調子じゃ…誰にも――――…カミングアウトしてないんだろ?
俺の前から消えるなら――――…
家族や友人…御近所に…“辻山 健太はゲイです”って…言いふらしてやる」
手首を掴んでいるからか…
辻山の鼓動が…
ドクンドクン…から――――…
ドッグン、ドッグン!と…
バカみたいに強くなったのが解る…
冷静な表情なのに――――…
「俺のプレッシャーの捌け口に…
辻山 健太――――…お前がなれ………」