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風鈴の夏

第1章 俺と夏

その日の夜中、俺は部屋で風鈴を鳴らしていた。
何だか落ち着かない俺は外の空気を吸いに夜の道を歩き出した。
少し歩いて休憩のつもりでベンチに座っていると青地に花火の柄の浴衣を着たまだ幼い、多分俺より15歳ぐらい年下の男の子がトコトコと俺のところにやって来た。

「どうした?迷子か?」
 
俺は少し心配になり、声をかける。
男の子は首を横に振る。

「ねえ、お兄さんには夢ってある?」

「夢?」

いきなり何を言い出すのだろう?
あいにく、俺にはなりたいものは無い。
夢…あっ!
 
「そうだね、トラウマを克服したいかな?」
 
「トラウマってなあに?」

小さい子には難しかったか。

「俺、小さい頃に夏祭りで迷子になってな。それ以来、夏祭りが嫌いになっちゃったんだ。その迷子になったことを思い出してしまうから。」

男の子は軽く頷く。
俺は笑って言う。

「君は迷子にならないようにね。」

俺はそう言って家に帰った。

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