赤い糸
第12章 赤い糸
確かめずにはいられなかった。
でも、その先の言葉が見つからない。
思い出したのかと聞けばコイツのことだ、絶対に首を横に振るに決まってる。
…じゃあどうする?
一瞬で頭をフル回転させ、たった一つの言葉を見つけ出す。
…あ
それはこの一言しかない
俺は絡めた小指をさらに強く握って真っ直ぐに大きな瞳を見つめて
「璃子は…誰のもんだっけ?」
その言葉に賭けた。
これで瞳が揺れなかったら小指を離そう。
「誰の…もんだっけ?」
…ビンゴ
璃子は頬に一筋の涙を伝わらせると柔らかく微笑み
「約束したじゃないですか…」
小さな震える唇で
「あの日…指切りしましたよね。」
記憶がなくなる前に逢った最後の夜の台詞を
「私はずっと…京介さんだけのモノです。」
紡いでくれた。
「…大正解。」
璃子が壊れるんじゃないかってぐらいに強く抱きしめた。
小さくて柔らかくて甘くて
「思い出したならちゃんと言えよバカ。」
世界中のなによりも大切で
「もう思い出してもらえないかと思ってたんだぞ。」
幸せの意味を教えたくれたコイツが
「どんだけ待ったと思ってんだよ。」
パワーアップして帰ってきてくれた。
「京介さ…」
だってコイツがキスをしたいなんて言わなかったら
「好きです。」
俺ら本当に終わってた。
「大好きです。」
「そんなの知ってるっつうの。」
また俺は愛のない世界を歩むことになっていた。
「おりゃ!」
俺は小さな体を抱き上げて
「わぁっ!キャッ!ちょっ!下ろしてください!」
リビングのソファーに座らせる。
「ここはちょっと…」
「イヤイヤここがおまえの指定席だろ。」
それはもちろん、俺の膝の上。
「いや、でもですね…」
跨がらせておまえと顔を付き合わせる。
「でもですね…じゃねぇよ。おまえはおとなしくここに座ってりゃいいんだよ。」
恥ずかしそうに小さな手で顔を隠すから俺はその手を指で絡め取る。
「ホント、世話が焼けるな。」
んで、顔中にキスの雨を降らす。
「キャハっ!くすぐったいです。」
「コラ、逃げるな!」
まったく…その百面相は反則だっつうの。
「俺を忘れた罰だ。」
絡めた小指を離して璃子の頬へと添える。
もう離したって大丈夫だよな?
だって俺たち赤い糸でガッチリ繋がれてるから。