赤い糸
第13章 With you
彼の舌と指先は私の体を溶かしていく。
「…怖い…京介さ…」
無意識のうちに体はビクビクと震え視界さえも奪われ始めた。
…私…どうなっちゃうの
これ以上愛されたら気が狂ってしまうんじゃないかって思うほどの快楽に恐怖さえ覚えた。
自由のきく左手を伸ばして京介さんの手を必死に探すけど
「我慢すんな。」
寝室に響き渡る水音の合間にくれた言葉はどこか意地悪で
「…もう…もう…」
何が何だかわからずに
「…イヤァッ!…アッ…」
大きな波に体を飲み込まれた。
「大丈夫か?」
京介さんはなかなか息が戻らない私の乱れた髪を撫でながら満足そうに見つめる。
「…ハァ…はぃ…。」
そして ニコリと微笑むと唇にキスを落として
「好きだよ。」
なんて。
本当にこの人はズルい。
「大好きだよ。」
さっきまで私の制止を振り切って攻め立てていたくせに甘い言葉を紡いでくる。
だから私だって負けじと意地悪を言ってみる。
「…ハァ…こんなにエッチな人だったなんて知りませんでした。」
だけどね、京介さんはそんな私の顔を見ながらクスリと笑うと
「あのなぁ~、まだも1/3も本気だしてないんだけど。」
「ええっ?!」
ここはベッドの上。
「相当手加減してるぞ?」
広いベットだけど逃げる場所はない。もちろん隠れる場所も…
「つうか、俺まだ脱いでもいねぇし。」
そんな状況でケラケラと笑いながら私を見下ろす京介さん
…勝てるわけない。
ちょっと待てよ…もしかして記憶があったときの私ってスゴいんじゃない?
こんなことに耐えてこれたんだから。
少し前の知らない自分を尊敬しながらもこの先の展開に枕を抱え怯えていると
「もうやめるか?」
京介さんは切なげな顔して私の額に唇を落とした。
時間はない。
でも、もっとあなたを思い出したい。
「あの…」
だから私はまた心を決める。
「無理しなくていいよ。俺は璃子の傍にいるだけで…」
「頑張りますから…」
「ん?」
「もう怖いなんて言わないですから…」
ちゃんと言う。
「1/3じゃなくて…100%で抱いてくれませんか?」
早く記憶を取り戻したい…
…だから
まっすぐに見据えるその瞳に吸い寄せられるように手を伸ばして
「手加減…しないで下さい。」
驚きながらも微笑む彼に舌を差し出した。