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赤い糸

第15章 永遠


「おまえはズルいな。」

璃子は抱きしめている俺の腕を抱き寄せ

「ウフフ…そうですか?」

柔らかな肌を押し付けた。

ダメだな。

コイツの前では俺はオレじゃなくなる。

「…ったく。」

見上げた空は俺の心と正反対に蒼く清みわたり

「いいじゃないですか。」

汚れのない璃子の心のようだった。

この腕を離せばまた一歩別れに近づき俺の胸をしめ付ける。

「いいお天気ですね。」

「あぁ。」

離れ離れになったって空は繋がってるから俺たちだって繋がっていられる。

そう この揃いの指輪も。

永遠を誓ったわけじゃないけど俺たちの絆であり証しで…

俺は何かを確かめるように細い指に鎮座する指輪をクルリと回すと

「あの…もう一度付けてもらってもいいですか?」

璃子は俺の返事を待たずにスッと抜くとその指輪にキスをして

「お願いします。」

やめてくれ。

「しょうがねぇな。」

そんな笑顔で俺を見ないでくれ。

俺も璃子のマネをして指輪にキスを落とすと華奢な指に手を添えて

「必ず俺のところに帰ってこいよ。」

想いの丈を紡ぎながら指に通した。

璃子はもう一度指に納まった指輪に手を添えてクルリと回すと

「…はぃ。」

いつものように首を右にちょこんと曲げて微笑んでくれた。

重なる唇は甘くて塩っぱい。

「泣くなよ…」

「だって…」

大切なものが俺の大きな手から少しずつ離れていく。

「先生に迷惑かけるなよ。」

「…はぃ。」

「向こうのスタッフと仲良くな。」

華奢な腕が俺の首に回ると首もとに頬を寄せて

「浮気…」

「しねぇよ。」

「そうじゃなくて…」

「なに?」

小さな声はたまに俺の度肝を抜く。

「しても、私にバレないようにしてくださいね。」

この期に及んでそんな台詞いらねぇのに。

でもそれはおまえのつよがりだよな。

「わかった。バレないようにする。」

だから俺はその洒落に付き合ってやる。

「…。」

…って、そんな顔すんなら最初から言うなっつうの。

「ウソだよ。おまえが帰ってくるまでいい子に待ってるよ。」

水面に雲が映った。

俺たちはその雲のようにカタチを変わっても心の奥底では繋がっているんだ。

「…愛してるよ。」

「私もです。」

そう…あの日繋いだ小指と小指。

俺たちは…赤い糸でしっかりと繋がってるんだ。

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