赤い糸
第2章 愛する人
「はぁ?」
「マジ?」
長谷川さんと佑樹さんの驚きようったらなかった。
「もう誘っちゃったわけ?」
「欲しがりだなぁ…おまえは。」
さっきまでの張り詰めた空気が一瞬にして淡い色へと変わる。
その色は京介さんの頬へと移り
「変な風に言うなよ。俺だって必死だったんだから…」
唇を尖らせた。
なんだろ、俺らこんな時なのにやたら笑顔になってて
「よしよし、その先は俺たちがいい案を出してやるか。」
「そうだよドーンと任せろ。今回は俺らがプロデュースしてやるから。」
「別にプロデュースなんていらねぇし。」
昔グランドで泥まみれになりながら白球を追いかけていた頃を思い出す。
どんなに疲れててもオンナの話となると先輩後輩関係なく、目を輝かせて女の仕留め方を夢中で話したっけ。
「おまえは相変わらず素直じゃねぇなぁ。」
「こういうとき、持つべきモノは…俺らだろ?」
身を乗り出して京介さんの肩をパンパンと叩く。
「うるせぇよ。」
この光景だけ眺めているとすぐにでも解決できそうな気がしてしまうほどだった。
だって俺らは二人がどれだけ心を通わせていたのか知っている。
周りも見えなくなるほど彼女を愛した京介さんと
その彼の手を必死に握っていた璃子ちゃん
「あー、やっぱここに来なきゃよかった。」
「ほら素直になれ。」
こんなお茶らけてるけど俺たち甲子園を目指したあの日のように一つの目標に向かって心を一つにしたんだ。
*
「う~ん…やっぱここは魔女たちにも頼んだ方がいいんじゃねぇの?」
でも 俺たちの頭に浮かぶアイディアなんて大したレベルじゃない。
「バカ!魔女の威力を試すのはまだ先だよ。今あの魔法を掛けられたら一目散に逃げられるだろ。」
無い知恵を振り絞り何とかしようととにかく頭を捻る。
「璃子ちゃんにとっては初めての球場ってことになるんだよな?」
「そうだよなぁ。」
「次に繋げなきゃ行けないんだよな…」
長谷川さんはゲームの作戦を練っていたあのときのようにテーブルをトントンと指先で弾く
「ねぇ、ケンタは?」
だから俺みたいなぺーぺーが口を挟んでも
「ダメ、アイツは嘘つけないから璃子ちゃんを困らせる。」
的確な判断で捩じ伏せられる。
何事も最初が肝心!
男4人、眉間にシワを寄せて頭を悩ませる夜だった。