赤い糸
第4章 優しい心
「本当に良かったの?」
「いいの。今日は璃子と食べるつもりだったから。」
璃子と私は練習試合が終わったあとファミレスに寄った。
メニューを開いて食べるものを決めたというのに璃子は直也と別行動になったことを気にしていて
「でも…」
「うるさい。ほらオーダーするよ。」
ピンポーン♪
「ちょっと!私まだ決めてないって。」
すかさず呼び出しのベルを押した。
今日は最初から璃子をミーティングと称した飲み会に出席させるつもりはなかった。
それを決めたのは京介さんたち。
先日開いた作戦会議で本日の成果を聞いてほしいと私は大きなミッションを預かってきていた。
「璃子もドリンクバー頼むでしょ?」
「うん。」
でもそれは私も同じ
今日の感想って言うか璃子の気持ちを聞いてみたかった。
すぐには気付かないかもしれないけど今日どれだけの成果があったのかって
「美紀はコーヒーでいいの?」
指令が次々と送られてくるスマホを眺めていたら璃子は私の分まで持ってきてくれようと席を立つ。
「悪いね。よろしく。」
私はその指令を確認しながらコーヒーを待つことにした。
…急かすな急かすな
いつもの居酒屋でヤキモキしてる彼らからは大量のメッセージ。
「はいどうぞ。」
「サンキュ!」
さてさて、少しでもいい報告が出来るように探っていこうかしら…
*
行く前の車の中ではあんなに溜め息を漏らしていたのに
「あんなに楽しいとは思わなかった!みんなスゴく上手だよね。」
少し話を振っただけでここまでペラペラと喋り出すとは思わなかった。
「パーンと打たれちゃったから点数取られちゃうなって思ったら…美紀も見たでしょ?京介さんが手をグゥッと伸ばしてさ…」
「うん。捕ってたね。」
「そう!そうなの~!」
璃子さん、私も隣に座って一緒に見てたのお忘れですか?
「でねでね、京介さんてスゴく打つの!カキーンって!最後のなんかホームランかと思ったもん!」
一つのプレーを思い出す度にフォークをバッドに見立て身振り手振りで私にその興奮を伝えようとする。
「それも一緒に見てたでしょ?」
「そだね…でもさでもさ…」
目を輝かせて頬を染めてはしゃぐ璃子。
待ちに待ってる彼らに私が送った最初のメッセージは
『ここに着いてから京介さんのことばかり話してます』
だった。