テキストサイズ

赤い糸

第8章 タイミング


「帰った?」

「京介さん知らなかったんですか?試合の途中にLINEが入って『具合が悪いから』って。」

約束通り優勝した俺は璃子にメダルを渡そうとみんなが集まる駐車場前に来たけれど

「また頭痛?」

そこに璃子の姿はなかった。

「なんだよ、それなら送ってったのに。」

美紀ちゃんを置いて帰らなければならないほどの頭痛に襲われたのだと考えると心配で堪らなくなる。

「最近アイツ体調よくなかったの?」

「いいえ、昨日はしっかりノロケられましたよ。」

美紀ちゃんはスマホを耳に当て璃子に連絡を取ろうとしてくれるけど

「ダメ?」

「出ませんねぇ。」

最近、体調が良さそうだからと安心してた。

「途中で倒れてなけりゃいいけど。」

「大丈夫ですよ。きっとタクシーでも拾ったんじゃないですか?」

相変わらず不甲斐ないオレ。

「そんなに心配なら自宅に掛け直してみましょうか。」

「あぁ、悪いね。」

一言言ってくれれば試合を抜けてでも送ったのに

「あ、もしもし…」

でも、璃子のことだ。

俺たちに迷惑を掛けられないと自力で帰ったんだろう。

「さっき真っ青な顔して帰ってきて部屋で寝てるそうです。」

「そか。」

安堵と不安が入り交じる中途半端な気持ち。

「それより京介さん、璃子とまだ連絡先の交換してないんですか?」

「うん…まぁ。」

俺は知ってるけど璃子は知らないと言う変な関係が続いてたけど

「ツメが甘いですよ?」

「いや、今日教えようと思ってたんだよ。」

そう、今日優勝したら璃子に連絡先を教えてもう一歩俺らの関係を縮める予定だった。

「手なんか繋いで喜んでる場合じゃないですよ?思い出さなくたってさっさと自分のモノにしないと誰かさんに取られちゃいますよ?」

「わかってるって。」

俺にだって考えがあるんだよ。

「つうか…今日璃子に言うつもりだったんだよね。」

「なにをですか?」

「いやまぁ…付き合おうって。」

真面目なアイツのことだからキチンとした方がもっと前に進めるんじゃないかと一週間考えに考えて出した結論

「思い出すまで待ってられねぇじゃん?」

「ですね…」

能天気に笑ってた俺の肩の向こうを見ていた美紀ちゃんの顔が強ばった。

「ん?」

振り向くとそこにはやたらに笑顔な

「遥香…」

一番会いたくないヤツが立っていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ